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東京地方裁判所 昭和54年(借チ)1028号・昭53年(借チ)1036号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

相手方Aは、相手方Bから土地を賃借し、その一部と自己所有地をあわせて申立人に貸与している。

申立人は、右地上に建物を所有しているが、その増改築に相手方らが承諾をしないため、これにかわる許可を求める。

【判旨】

第三当裁判所の判断

一本件資料によれば、申立の理由の一及び二の事実を認めることができる。

二鑑定委員会は、本件増改築について、土地の通常の利用上相当であると認め、承諾に代わる許可を与える場合、申立人から、相手方福本安恵に対して、財産上の給付として金六八八、〇〇〇円を支払い、申立人と相手方勝又久治間の本件土地についての賃料を月額二三、四〇〇円(一平方メートル当たり金二〇八円)に、相手方勝又久治と相手方福本安恵間の別紙物件目録一及び二記載の土地についての賃料を月額一三、五〇〇円(一平方メートル当たり金一五三円)に増額変更することを相当とする旨の意見書を提出している。

三以上の事実及び鑑定委員会の意見によれば、本件増改築許可の申立は相当と認められる。<中略>

四最後に付随処分について検討する。本件においては、当事者間の利益の衡平を図るため、申立人に対し、財産上の給付を命じ、申立人と相手方勝又久治間の賃料及び相手方両者間の賃料を改定するのを相当と認める。

1 鑑定委員会は、増改築の対象部分の敷地面積の更地価格に、慣行的承諾料割合の最も高い率を乗じる方法によつて、財産上の給付額を算定している。更地価格及び慣行的承諾料率を因数として、給付額を算定することは相当と考えられるが、まず更地価格の算定面積を増改築部分の敷地に限定したのは不当といわなければならない。借地(賃借地及び転借地)全体が一棟の建物の敷地として使用されていること、増改築による経済的利益の増加も一棟の建物の全体に及ぶこと、しかもそれは慣行的承諾料割合を決めるに当たつて考慮されるべき要素であることなどを考えれば、更地価格は、本件建物の敷地面積(ただし、相手方福本安恵の所有土地部分に限る。)について求めるべきである。更に乗じた割合について検討するに、なる程本件増改築は、意見書の指摘するとおり、対象地が商業地域であり、特に一階部分は店舗の改築を主体とするため土地の利用効率の増加は比較的大きいということができるけれども、店舗の改築は一階の一部に過ぎないこと、増改築による床面積の増加は約四二パーセントに留まるなど増改築の規模は必ずしも大きいとはいえないこと、一方前記のとおり相手方福本安恵の所有土地で、本件土地の近接地の利用価値の相対的低下その他当事者間の諸般の事情を考えれば、承諾料率は、三パーセント程度を相当と考える。よつて申立人が相手方福本安恵に支払うべき財産上の給付額は、金一、〇九八、〇〇〇円とする。

ところで相手方勝又久治は、申立人と転貸借契約を結ぶに当たつて、口頭で増改築を禁止することを約束したから、同相手方についても財産上の給付がされるべきであると主張するが、本件資料によつても右特約の存在は必ずしも明らかでなく、いずれにしろ同相手方において本件増改築を承諾している事情などを考えれば、相手方勝又久治については、格別財産上の給付を命ずる必要はないと考える。

2 次に申立人と相手方勝又久治間の賃料について検討する。鑑定委員会は、対象物件の所在する大田区における年間地代の地価に対する平均的割合を乗じて適正賃料を算出している。意見書の指摘するとおり、対象地周辺の継続地代としての実際支払賃料は、広範囲にわたつているので、適当な比準賃料を求めることの難しいことは理解されるから、年間地代の地価に対する割合を0.6パーセント(ちなみに、意見書の引用する日税不動産鑑定士会作成の「継続地代の実態調べ」の昭和五四年版によれば、昭和五四年一月一日現在における近隣公示地価格に対する継続地代の平均割合は、商業地において0.71パーセント、住宅地において0.69パーセントである。)として更地価格に乗じたのは、適正賃料の評価方法の一として是認される。ところで、申立人は、相手方勝又久治に対して、昭和四五年七月以降任意改定した賃料を供託してきたが、昭和五二年八月以降は供託を止めて任意支払つている事情のもとにおいて、同月における賃料を直ちに両者間の合意賃料とみなすことは問題なしとしないが、これを一応の基準として昭和五二年八月以降の地価等の変動率を乗じて概算した結果も参考に値すると考える。

(一) 地価の変動率

大田区における近隣公示地(大田五―一 西蒲田七―四六―七、大田五―一四 蒲田五―一五―二、大田五―一六 大森西三―一五―一二)の公示価格の変動状況から地価変動率を求めると、昭和五二年八月一日現在の地価は、同年一月一日現在及び昭和五三年一月一日現在の地価が同一であるから、これと同額と推定し、昭和五四年一〇月三〇日現在の地価は、同年一月一日現在の地価が平均上昇して昭和五五年一月一日現在の地価になつたものとして推定した上、その価格を比べて、両時点間の変動率を求め、それに意見書の算定した、昭和五四年一一月から昭和五五年九月までの地価変動率6.75パーセントを加えると、それぞれ1.155、1.183、1.222で、平均すると1.187である。

次に、追加意見書の引用する財団法人日本不動産研究所発行の「全国市街地価格指数」によつて六都市用途地域別市街地価格指数(商業地域)の推移をみると、昭和五二年八月現在の価格指数は一、七三八(同年三月現在の指数一、七二七及び同年九月現在の指数一、七四〇から推定)で、昭和五五年九月現在の価格指数は二、〇六七(同年三月の指数二、〇五九、同年三月から九月までの地価変動率を追加意見書により3.8パーセントとして推定)であるから、変動率は、1.189である。

(二) 物価の変動率

総理府統計局発表の東京都区部の(地代)家賃統計指数によれば、昭和五二年八月現在においては、121.5、昭和五五年九月現在においては、142.0であるから、その間の変動率は、1.169である。

前記みなし合意賃料から公租公課(月額五、六四六円相当、別紙物件目録一、二及び三記載の土地について、それぞれ一平方メートル当たりの税額(昭和五五年度)を求め、それに各土地の面積を乗じた総和)を除いて、これらの変動率を乗じる方法によつて、昭和五五年九月現在の賃料を試算すると、およそ一六、七〇〇円となる。右金額は、公租公課のほぼ三倍(一六、九三八円)に当たる。

本件土地の収益性の増加、それに伴う借地権の長期化、相手方勝又久治から転借するその余の土地の利用価値の相対的低下その他諸般の事情を考慮し、前記鑑定委員会の意見及び右の試算賃料を参考にし、申立人と相手方勝又久治間の本件土地についての賃料を月額二〇、一〇〇円(一平方メートル当たり金一七九円)に改定する。

なお、本件土地は、本件建物の敷地として一括して借地契約(賃貸借及び転貸借)が結ばれており、また従前からの賃料の支払事情なども考慮して、賃料は、賃貸地及び転貸地を併せて、決定するのが相当であると考える。

3 相手方福本安恵と相手方勝又久治の賃料について、鑑定委員会は最終合意賃料に地価変動率を乗じる方法で鑑定評価しているが、右はそれ以前の両者間の賃料改定の経緯にかんがみれば、相当である。右評価額に、前記大田区における年間地代の地価に対する平均的割合から鑑定評価した結果を参考にし、借地権残存期間、相手方福本安恵の所有する、その余の転貸地の宅地としての価値の相対的低下、公租公課(月額四、七二〇円相当、別紙物件目録一及び二記載の土地について、それぞれ一平方メートル当たりの税額(昭和五五年度)を求め、それに各土地の面積を乗じた総和)との関連その他諸般の事情を考慮して、相手方福本安恵と相手方勝又久治間の別紙物件目録一及び二記載の土地についての賃料を月額一四、九〇〇円(一平方メートル当たり金一六九円)に改定する。

(門口正人)

物件目録<省略>

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